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zoom RSS 俺はピアノだ (ある家のピアノのひとりごと)

<<   作成日時 : 2013/08/01 00:08   >>

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 俺はある家の居間に居座り続けているピアノだ。 名前はまだ無い、というと我輩先生のパクリになってしまうが・・・。もっとも、苗字(製造元)だけはボールドウィンという米国生まれだ。 この家のあるじは俺の立派にならんだ歯(鍵盤)を、時たまカタカタ鳴らすだけだ。このへたくそ!腹が立つが、ただで住まわしてもらっているし、この家の女房が時たま顔を磨いてくれるのでそうもいかない。 まあこれ以上の悪口は弦がプッツンする元となるからやめておこう。

                                

 漏れ聞くところによると、あるじの母親はピアノの名手で、女学生の頃NHKで演奏した経歴を持つという。 そのころはスタインウェイさん(?)というピアノが相手をつとめていた。そういう家庭環境に育ったあるじがそのあとがまに俺を据えることにしたらしい。

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 名家の出であるスタインウェイさんには敵わないが、俺もまた、クラシックやジャズは勿論、ポピュラーの曲の旋律を奏でるのに適しているとの評判だ。 

 綺麗なメロディを奏でてほしい・・・そういう俺の願いも虚しく、誰も見向きもしない日々が続いた。孤独な俺が何処かに移りたいと思っても 「ピアノ売ってチョーダイ」 というTVコマーシャルは完全に無視されてしまった。

 俺が沈黙してから何年も時は過ぎていった。 


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 ある朝、あるじ夫婦が新聞を読みながら1910年代に作られた周ピアノが復活したと話しているのを横で聞いていた。もう良い音色が出ない古いピアノ、それが修復され横浜中華街の学校に寄贈され記念のセレモニーでは美しい音色を響かせたそうだ。 それにくらべて、この家のピアノである俺の扱いはひどいものだ。くやしくて涙が出そうだったが、すでにかれ果ててしまっていた。 トホホ・・・。


                                 

 「私、またピアノをはじめようかしら」


 その言葉を聞いて俺の心ははずんだ。この日待っていたんだ。 妻が久々に俺の前に座って弾き始めた時、この家のあるじはせせら笑いやがった。 なぜなら、 永年放って置かれた俺の自慢のピアノ弦はがたがたになってハーモニーを奏でることができなかったからだ。

 「相当ひどい状態ですね、5年以上も調律されていませんね」

 調律師の言葉を聞いたこの家の二人はだんまりをきめこんだ。

 長い時間をかけ調律を終えた俺はようやく前の美しい音色に戻った。 


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 「よかったね、毎年調律を怠らずいたわってやりましょう」

 あるじとその妻のこの言葉を聞いて、ますます張り切っているピアノの俺、ボールドウィンなのだ。

 



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
感動しました。長くなるのであまり書けませんが、邦楽家の我が家で、ピアノに打ち込んだ妹がいました。我が家はそんなに高級品は買えなかったのですが、ピアノの音色には、ちとウルサイのが揃っていたような気がします。
ゆかしい佇まいのボールドウィンさん、弦を引き締めて頂いて良かったわね〜
これからは、いい人生??を送ってね。
アズ
2013/08/20 14:06
アズさん コメント多謝! もう少しピアノに身を入れていたならば、こんなブログを書く事無かったのに・・・
こんにちは!ハングルース
2013/08/20 15:33

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