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zoom RSS 恥と共に生きるなら、名誉と共に死ぬほうがましであるー実際に見たアラブの格言

<<   作成日時 : 2010/02/11 00:47   >>

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 アラブ人の自尊心の強さは行動もさることながら日常の会話の中でもよく見られます。彼らは自分たちの伝統と習慣を大切にしますから、それが外れた場合、日本人が当たり前と思っている事でも自尊心を傷つけられたと怒り出してしまいます。

 アラビアに赴任してすぐのことでした。私の部のオフィスボーイのポジションが空いたので、求人をすることになりました。今でこそ、このような職種は出稼ぎの外国人で占められていますが、その当時(1970年代後半)のサウジアラビアではこのようなグレードの低い職種でもサウジ人が働いていましたから、たくさんの応募がありました。


 アラブでは仕事上の能力に関係なく身内の者を優先して採用することが義務と考えていますから人事部でまとめて採用することはなく、各部・課でリクルートします。

 やはり縁故にたよる者が多く、誰それを採用してくれと方々から圧力がかかりました。私はこのような伝統的なアラブの習慣を無視して、不公平を排除するために面接試験をし、これぞ、と思う人物を採用しました。

 その男が事務所にきて翌日、スタッフたちからブーイングがわきおこり私に抗議が殺到したのです。彼らは口々にとんでもない奴を採用したものだ、彼奴は我々に何にもやってくれないじゃないか、とカンカンになっています。でも私のオフィスの掃除やお茶いれ、他の部への使い走りはちゃんとこなしているので、不思議に思って彼を呼んでその事情を聞きました。

 彼は堂々と胸をはって自分は悪くないと言い張りました。アラビア語の通訳をしてくれたスタッフがいうには、彼の部族はここのスタッフ達よりかなり上のランクにある。したがって、自分より格下の部族であるヤツの机の掃除やお茶を入れるのは私の部族の名誉にかかわる事だ、ましてや、彼らが使う便所掃除などもっての外である。ボスの貴方が命令しようともやらない、こんな恥をかかされる位だったら、死を命じてくれ、と怒り出してしまいました。

アラブの格言の「恥と共に生きるなら、名誉と共に死ぬほうがましである」 という事です。

 結局、彼は私の専用ボーイになってしまいました。しかし私の部署にはボーイのポジションは一つしかなく、スタッフたちの不満はつのるばかりです。

 参ったな・・・私はすっかり意気消沈してしまいました。

 私はしかたなくアルバイトのインド人を自費で雇い、皆が帰ったあと部内や便所の掃除に当たらせました。

 3ヶ月もたったある日、そのボーイは私に話があるとやってきました。会社をやめたい、というのです。私は喜びを胸に隠しわざと渋面をつくり、それはまた何故だと慰留するふりをしました。

 彼は兵隊になりたいというのです。それは結構なことだ、お前のような有能な若者が防人(さきもり)となってお国のために尽くすならば、と一昔前のせりふを吐いて、彼に請われるままに「推薦状」にサインしました。

 スタッフたちの喜びもひとしおでしたが、実は彼が会社をやめるのはオフィスボーイの給料よりも兵隊の方が高くなった、という単純な理由でした。

 アラブの格言に曰く、「良いたよりを求めるな、時がくれば向こうからやってくる」

 待っていたかいがありました。

 次のオフィスボーイの採用には私が一切口を挟まなかったのは、いうまでもありません。 私のやるべき仕事をすっかり丸投げしてしまいましたがその後の部内の空気は明るくなりました。

 やはり、「アラビアの砂漠はアラビアのらくだで渡れ」 ですかねえ・・・。


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